友人に薦められ、少年「黒崎文也」は社会現象ともなったゲーム『The World』を始めた。
少年達が行ったフィールド。そこはウイルスに乗っ取られたカイトと謎の少女アウラが居た。
文也こと「カオス」はアウラに『消去の力の書』を貰った。
そして、もう傍らの少年、カイはカイトに倒され、意識不明となった。
情報を集める内に「.hackers」のヘルバと言うPC(プレイヤーキャラクター)にエリアワードを貰う。
そのエリアワード通りにフィールドに行くとそこにはイフリートと言うモンスターが居た。
そのモンスターを倒すと、大規模のクッキングヒーター機能停止が起こった。

このゲームには「.hack事件」と言う物がある。
詳しい事は謎だが、世界中に色々な被害があったらしい。
しかし、それは二年前とまだ古い物ではない。
さらに、事件は始まったばかりだった。
管理人「リョース」の話によると、敵は属性を司る女神だと言う。
女神達の名は「エレメント」と言うらしい。
カオスはエレメントの調査を頼まれエリアワードを貰った。
どこかが抜けている「.hackers」の少年「ルカ」
カイトの知り間と言う口数が少ない少年「リョウ」
カイトと「.hack事件」での繋がりがある(カオスは知らない)「ブラックローズ」
ハイテンションの「クリス」
と共にエリアへ向かった。
そこで会ったのはエレメントの「ヴォルテ」
秘めた力を覚醒させ、ヴォルテを倒し、タウンへ戻るとそこにはエレメントの「ウンディーネ」と会い、戦う事となった。
ウンディーネは強く、太刀打ちできなかった。
絶体絶命の状況を救ったのは何とエレメントの「シャドー」だった。

「エレメントなら何故、僕らを助けるんですか?」


「あなた達を愛しているから…」
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高山都市『ドゥナ・ロリヤック』
何故か久々に帰ってきた感じがする。
人は誰も居ない。
しかし、羽が生えている。さっきは生えていなかったが、ヴォルテを倒して戻ると生えっぱなしだ。
「リョース…何で誰も居ないんだよ…」
「今情報が入った。我々のPC(パソコン)以外がある世界中の家は全て停電したらしい」
知らぬ間に世界中を大停電にしていたらしい。原因は明確だった。それはヴォルテを倒した事。以前、イフリートを倒した時も同じようにクッキングヒーターが大規模で故障した。
「…ねぇ。ブラックローズ。ちょっと来てくれないか?皆。今日はもう落ちよう。僕らもすぐ落ちる。」
「え?何よ。まぁ良いわ。付き合ってあげる」
リョースは『The Wolrd』で異常が起きていないかの点検の為。
他の人達は単純に落ちた。
そして、二人だけになった。
「このままで良いのかな…『.hack事件』を悪化させたものが今起こっているような気がするんだ。僕はただ、現れたから倒しているだけ。翌々考えてみるとエレメントは何もしていないと思うんだ」
ブラックローズは目を細め、恐ろしく睨む。
「エレメントはデータドレインを持っているのよ!危険じゃない!それにカイトをあんな風にしたのはあいつらよ!」
「それもそうだけど、それならカイトさんを操っている敵を倒せば良いんじゃないかな…何もエレメントまで倒す必要は…」
弱音のカオスに対し怒ったのかブラックローズは大剣を地面に突き刺す。
「……」
カイトの事を助ける事の為にエレメントを倒す必要は無い。しかし、それで…
「意識不明の人達はそれで助けられるの?『.hack事件』の時も最悪な状況になりながら。電子機器とかもやられて、カイトが救おうとしてたオルカの居る病院が影響を受けても…最悪の次へ行っても『八相』を倒して…皆を助け出したの…だからきっと今回も…」
晶良は『.hack事件』を思い出し、涙ぐんでいた。
言った自分でも本当に助かるかどうかなど解る筈が無かった。
こんな事件があると涙脆くなる事も嫌だった。
「もしかしたら…助からないかもしれないんだよ…」
「あたしだって…カズをやられてるのを忘れないでね…あたしだって…辛いんだから…後に年で社会的に大人って認められる。でも…まだ何にも解らないよ…どうやって辛いのを乗り切って良いか。こんな事も二回目だよ。でもまだ解らないのどうやってカズを助ければ良いのか。もしかしたらあの時は奇跡だったのかもしれない。必然だったのかもしれない。でも、今起こってる事は誰にも解決法は解らないんだよ…昔と今は助け方が違うかもしれない。だったら賭けようよ!もしかしたらに!なにも出来ないのよ。他に…」
長い沈黙。黒崎文也。そして速水晶良はボロボロと泣いていた。
泣いていたって、何も始まらない事は解っている。雫と共に辛さを流してくれる訳ではない。しかし、今は泣く事に意味がある気がした。
「ゴメン…ブラックローズ…もっと頑張るよ…」
「ううん。良いの…アンタはカイトに少し似てる」

霧が薄くなってゆく。
よく見ると一つの塊に成っていた。
塊は人の形を構成し、やがて、女性へと変貌した。
長い水色の髪は澄んだ湖のように美しく。細く白い肌はすぐに折れてしまいそうだ。穏やかな顔立ちは母を思わせる。水色の服を着装しているがあまりに小さな服だ。
「ヴォルテを…倒しましたわね。負けるなら弱かったという事でありますわ。まだ私達はあんな物じゃないですわ。まぁ…小手調べぐらいはしてあげませんと失礼ですわね。さぁ…戦いましょうか。私は“水の水神『ウンディーネ』”」
ウンディーネは霧を集め、氷柱のような氷を作る。氷柱は先端が鋭くなり、けずれ、日本刀へと変貌した。
「何を…戦う理由が無いじゃないか!」
「私はエレメント。あなたは黄昏の羽の持ち主。それで十分ですわ」
ウンディーネは素早い動きで氷の刀を振る。剣筋は見えず、左下から右上へと瞬間移動したように見える。音は片手に持っている割に重い音が鳴る。
「さっきは守られっぱなしだったしね!アンタを支えられなかったからアンタはさっきみたいにネガティブ思考になっちゃったのよね!」
ブラックローズが大剣を盾にし、カオスを守る。
「へぇ…やるんですわね…」
「ッ…!」
守ったつもりだが実際は間一髪のタイミングだった。
後、0.1秒遅れていたらカオス諸共、八つ裂きにされていただろう。
「まだまだですわ」
余ったもう片方の手にも氷の日本刀を持ち、カオスに向かって斬り付けた。
双剣を交差させ、防御体性を作る。ウンディーネは二本の刀を巧みに操り、カオスとブラックローズ双方に斬撃を与える。
二対一とは思えぬ戦いだ。真横から見ればまるで片方が隠れているが二人居ると思うだろう。
早過ぎて防御を解く事が出来ない。
文也と晶良はその時同じ事を思った。
――このままじゃぁ…負ける!
ただ、文也は違った。
――僕は何の為にカオスと融合したんだよ!力を得る為だよね!こいつを倒せるぐらいは…
双剣が光を放つ。白く光り、前が見えなくなる。
目を双剣が巨大化していた。




200607272029000.jpg



不安定な形をし、ただ大きいだけの双剣。ただ、今はこれで十分だ。
カオスは逆手持ちしていた双剣を持ち替え、正面へ突き出した。ウンディーネは間一髪の所で右に跳び、避けた。
「ウフフ…女とは言え、私は武士ですわ。これぐらいは当然ですわよ」
すると、ウンディーネは蜃気楼だったかのように消え、気が付けばカオスの真左に居た。首筋に刀を接近させて。
「楽しゅうございましたわ。しかし、あなたはまだ、弱いですわ。私に及びませんわ…どうせならここで倒してあげましょう。シンクロ率が高いですわね…あなたを倒したら現実の人間も死んでしまいますわ」
ゆっくりと首へ刀を近付ける。

タタタッ!
一人の女性が走って来た。童話出てて来る魔法使いの服が黒くなった物を着ている。杖をもち、背が高く。それと対峙する優しい顔立ち。
彼女を見た瞬間。斬撃が止まった。
氷の日本刀は先端から徐々に崩れ、割れた。
「あなたは…“漆黒の女魔術師『シャドー』”…帰ってきてくれたのね…」
シャドーと呼ばれた彼女はウンディーネを睨んだ。
「私はあなた達の元へ戻る気は無い。だけど、彼らを助けてくれるなら一時的に戻っても良いわ」
「解りましたわ。運が良いですわね…あなた達は…ウフフ…」
そう言うとウンディーネは微笑んだ。
「シャドー?エレメントの一人?」
シャドーは振り返った。
「ええ。裏切り者だけどね」
「エレメントなら何故、僕達を助けるんですか?」
「あなた達を愛しているから…」
「さぁ。行きますわよシャドー。イフリートの事など、色々聞きたいことがありますわ」
氷の竜巻が起こり、シャドーとウンディーネはその中へ消えて行った。

「僕は…まだ…弱い…」
ログアウトした後もウンディーネの言葉が残った。
もう一つ。シャドーの言葉も。
「僕達を…愛している…」

―――僕達はまだ知らなかった。僕にとってシャドーの言葉は最悪へと繋がった瞬間だった事を―――

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双剣が電気を通し痺れる。ゲームなのに痛い。だが、死ぬほどではないようだ、ただピリピリと体に電気が少量走る感覚。双剣は何故か電気を吸収しているようにも見える。
『大丈夫だ文也。このまま振り下ろせ』
――え?
耳で声を聞いた感覚が無いのに自分以外の声が聞こえる。しかし、今振り下ろさなかったら負けてしまう。
「振り下ろす。このまま振り下ろす!」
双剣を振り下ろすとそれに誘導されるように歪む。
「曳き付けられてる?よし!このまま出て来い!」
ヴォルテも引っ張られるだけではない。
「私だって負ける訳にはいかないの!このまま引っ張られてたまるもんか!」
太さが増し、文也に来るダメージも大きくなる。耐えるしかないが耐え切れるものではない。
「ウッ…ウアァ…ッ!」
――僕が負けたら皆が…皆を守るんだ!
「シ…シンクロ率上昇…170%…これ以上は現実にも影響を与える。危険だ!カオス!」
「ウワァァァァァァ!!」

【PROTECT BREAK OK】

完全に曳き付けた。ヴォルテは元の少女の状態に戻り、荒い息をたてながら金色の杖で体重を支えていた。
「まさか…こんな事に…もういいわ…直接データドレインしてあげる!」
杖に光の矢が映る。どうやらあの杖はイフリートの鎌と同じような物らしい。
「フフフ…スキル中に相手が固まるのをなんて言うか知ってる?フリーズ効果って言うの。もう覚えた所で無駄だろうけど。フリーズ効果であなたは動けない筈。さようなら」
フリーズ効果で動く事が出来なく、更にそのスキルがデータドレイン。正に絶体絶命だった。
『俺をなめるな。俺は「黄昏の羽の書」そのもの。フリーズ効果等効かない』
「僕は、全てを終わらせるまで!負ける訳にはいかない!」
――一海の為…拓実の為…カズの為…仲間の為…そして、春山先輩の為に!
羽が広がり、前方に風を送りその勢いで後ろへ飛ぶ。
フリーズ効果を破り、絶体絶命を回避した。
「クリス!下級の魔法でも良いから魔法を使って!」
「え?うん…ジュローム!」
ヴォルテにフリーズ効果が掛かる。その隙に目にも止まらぬ速さで光の矢があるままの杖を盗み、ヴォルテに向かって突いた。
「え…嘘…嫌ァァ!」
完全にデータドレインした。杖にデータが入る為、カオスに影響は無かった。
ヴォルテ光り出し、八方向にある石がロープによって正八角形の形になり、その中心に正八角形にカットされたクリソベリル・キャッツ・アイと思える宝石はロープで支えられている。
イフリートの時と同じ。
「カオス。アンタはここで休んでなさい!後はあたし達で十分よ」
ブラックローズはフィールドの隅に誘導する。
「ありがとう…」

*

崩れるヴォルテ。
崩れ落ちる前にヴォルテが居た場所に発光体がある。その光とそれはとても小さな物でもう少し明るければ解らなかっただろう。
「あれはアウラのフラグメント(断片)ね」
ヘルバが解説をした。
「アウラの欠片…」
「そうよ。デリケートだから大切にしなさい」
手でフラグメントを握るとすぐ光は消えた。重要アイテムを見ると確りと入っている。
「それじゃあ。帰りましょう」
「解った。転送リングを送る」

拍手のメッセージをお返しさせていただきます。

メッセージは 1 通です。

多分反転↓


>>Kikurageです^0^私の友達も浪鬼さんの小説.hackを拝見してるようです^0^

メッセージありがとうございます^^
ほぅ…そうですか^^
開設当時はそこまでアクセスが伸びるとは思ってなかったのですが意外と伸びちゃって、たまに30人も来て頂いています。
これもkikurageさんのお陰もあると思い、感謝しています^^
兎に角、アクセスが伸びると言うのは普通よりアクセス数が少ないネット小説でとても嬉しい事です。
ただ、順位が伸びないのが悩みだったりします。正直な所順位が高いkikurageさんは羨ましいです。
しかし、kikurageさんの小説もとても面白いので仕方ないかとも思います。
これからもどんどん良い小説にしていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
お互い頑張りましょう。
――嫌だ…誰も守れないなんて…

シンクロ率上昇中。90%を超えた辺り。文也は倒れている。FDMは真っ暗。その中に一人。カオスではなく、文也自身倒れているが居る。起き上がって周りを見渡すが、誰も居ない。自分でもどうやって起き上がったのか解らない。起きる為のアクションコマンドは無い。
――ここは…皆は…もしかして全滅したのか?
「誰か!返事してよ。誰も居ないの?居るなら返事してくれよ…」
返事は無い。声が反射し響くが、それも空しく消える。どうやらここはヴォルテが居るフィールドから離れた場所らしい。
――兎に角、脱出。
文也は走る。コントローラーを持っている感覚は無い。走りたいから走れるような感じだ。ゲームでは良くある事で、コントローラーとゲームの操作に慣れるとそう感じるだけだ。
そう思った。しかし、その時シンクロ率96%。コントローラーなど手元には無い。足元に落ちている。それにも気が付かない。
混沌と呼べる暗闇。その暗闇の奥に居るのは何者でもない、力を得る時に改造されたPC『カオス』が立っている。横には一海や拓実が立っている。
「助けてくれ!文也」
一海が問い掛ける。
「お前がやられたら!アウラはどうやって助けるんだよ!」
拓実が責める。
「お前はまだ負けるわけにはいかない。お前の性で仲間がやられる。まだデータドレインはされていない」
カオスが追い討ちをかける。
しかし、全員まだ無事だと言う事が解った。なら、今はそれで良い。
なら、守りたい。助けたい。救いたい。
その為には力が欲しい。仲間を守れる力を。大切な仲間。その中ではクリスが一番守りたい人だろう。好きとは違う。友情と言えばはっきりする。
「ゴメン一海、拓実。今、僕には君達を助ける事より…大切な仲間達を守りたい。だから…許してくれ…」
一海、拓実、カオスが光る発光体になる。
一体化したと思ったら小さく四角く薄っぺらい、まるであるデータの欠片のようだ。
そのデータの断片はどうやら話せるらしい。
「あなたに…力を…」
――ッ!
「君は…アウ…ラ…?」
データの欠片は話し続ける。
「もっと強い力を…あなたは欲しいの?」
この際、力があればどうでも良かった。
「欲しい。もっと強い力が」
「なら…」
データの欠片が呟くと、カオスが現れた。
「あなた自身に彼の力を…」
カオスが文也に向かって歩いてくる。
「融合だ。我らは一体となる」
カオスは必要最低限の言葉のみしか言わない。
「解った」
文也も同じく。

混沌の中に一点の光。眩し過ぎるほど。

100%、110%、120%、130%、140%。
「―ッ!ひゃ…150%…ありえない…」
急に元に戻った為、少し驚いた。
――これは…僕?皆居る…力が湧いてくる。自由に動ける。ボタンを押してる感覚が無い。
――何でも出来る気がする。

そして今に至った。
稲妻へと双剣が振り下ろされる。自分でも何を血迷ったか解らないがこれで良い気がする。自分の思考ではなくカオスの思考のような気がした。
「守る。守る!守るんだ!!!」


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避雷針のような鉄の物体が十本立てられただけで、後はカイトと二回目に会ったときのフィールドと変わらない。
「フフフ…」とヴォルテが微笑む。
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すると、一筋の光となり、天へ登った。
「この技は…一度きりしか使えないわ…でもあなた達なら十分倒せる」
コントローラーの自由が効かなくなった。敵スキルだ。
ログには『上落雷剛電光石火』と書かれている。
まさに電光石火の如く素早い。ヴォルテが天から落ちてきた。しかし、誰にも当たらない。ど真ん中に落ちたがそこには誰も居なかった。
「外した?」
カオスはそう考えた。だが、ヴォルテはイフリートのように単純な攻撃をした訳ではないようだ。ヴォルテは電気に変わり地を這う。その時に受けたダメージによってダメージに弱い呪紋使いのクリスが大ダメージを受けた。
「あはは…あたし電気はダメー。耐性装備してないもん…オリプス!」
クリスは笑いながら回復魔法を使った。
分裂したヴォルテは避雷針のような棒に入った。避雷針はバリバリと音をたて、避雷針が電気を帯びている事は視覚で解る。
「これが必殺『上落雷剛電光石火』だ!」
十本の避雷針が電気によって結ばれ、正十角形が出来る。
その一角一角からそれぞれ全ての角へ電気が結ばれてゆく。
そして避雷針からそれぞれ幾つかの稲妻が走る。
000.jpg

「グッ…グアア…」
一発で残りHPがパーティメンバー全員が1。クリスはゴースト化している。全員一発でやられる。
「行くわよ『上落雷剛電光石火』はまだまだこれから」
『上落雷剛電光石火』の一本一本の稲妻の太さが増える。やがて、一体となり、電気の海となった。
――このままじゃ…全員倒されて…全員データドレインされて…全員意識不明になって…嫌だ…僕のせいじゃないか…僕が確り逃げていれば…

「おい!誰か!応答しろ!こちらリョース!応答しろ!シンクロ検査データがまだ一人分生き残っている。全滅はありえない筈だ…」

――嫌だ…誰も守れないなんて…

「カオス…何をしている…シンクロ率が変動しているぞ」

――ゴメン一海、拓実。今、僕には君達を助ける事より…大切な仲間達を守りたい。だから…許してくれ…

「馬鹿な!99%だと!」

――『あなたに…力を…』

「―ッ!ひゃ…150%…ありえない…」
そこに居るのは、カオスでは無かった。黒崎文也の顔をし、鳥のような羽を持ち、双剣を持ったPC。しかし、名はカオス。
「リョース、こちらカオス。今ヴォルテを倒す」
「データドレインを使わずに倒せると言うのか!馬鹿な事を言うな!ヘルバを蘇生し転送させるのだ!」
カオスは言われた通りに全員を蘇生させた。しかし、
「ヘルバさん。僕はヴォルテを倒します。一発で倒せなかったら協力してください」
「あなたを信じるわ」
ヘルバは武器を突き立て、いつでも逃げられる体性を作った。
「フフ、『上落雷剛電光石火』は、針を叩かない限り無敵よ。針を叩いたところで、漏電して君が死んじゃうけどね」
稲妻は笑う。表情は解らないが声は確かに。
「誰が…針を叩くって言った?」
「何をしようとしているのあなた!」
カオスは飛んだ。針と針の間、稲妻走る場所へ。
「自滅するき?」
「僕はまだ戦う理由がある。お前を倒してもまだ、戦わなければならない。皆救うために!」
稲妻へ向けて、双剣を思いっきり振り下ろした。


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「最後に1つ。あいつの名前は?」
「あいつ?」
「私達が倒すべき相手よ」
「カオス…」
「『シャドー』…今戻れば私に消されなくて済むのに…『グランディス』ごめんなさい、ダメだったわ…」
無線機のような物を取り出し、口元に近づける。
「『ウンディーネ』様。『シャドー』『カオス』データデリートを始動させます。作戦内容は私の得意な攻撃のちデータドレインで宜しいでしょうか?」
「え?全滅後にデータドレインですか?了解しました」

大雨が降っており雷鳴鳴り響く草原。斑点にノイズがあり、羽が生えてきていると言う事はウイルスバグ、もしくはエレメントが居る。
カオス、リョウ、ルカ、クリス、ブラックローズ、ヘルバ。それぞれが転送された。
「さて、行きましょう。あなた達は調査しながら進んで。私達は先に行って待機。ピンチの際に手助けするわ」
「了解!」
ヘルバ班は先に転送され、ダンジョンへ行った。
「僕達も行こう!」
走ってでは遅い。快速のタリスマンを使う。仕方なく全員に。
――出費が痛い…後でアイテム売ろう…
ダンジョンの入り口へ入るとヘルバ達が居た。
「酷いわ。このダンジョン。部屋が三つしかない。しかも、三つ目の部屋は黄色い霧が立ち上ってるの。ウイルスバグなら紫の筈だわ。と言う事は原因はただ一つ。エレメントが居るみたいね」
するとブラックローズが、
「ここの敵もたった一部屋なのにウイルスバグが三体も出てきたの、しかも強いし。もー最悪!」
「ど、どうやってここまで来たんですか?」
何故かクリスが答えた。
「ヘルバが転送してくれたんだよ〜・ワ・」
「そんな事よりウイルスバグ群を倒しなさい。先に進めないわよ」
ルカはプルプルと震えていた。
「怖いなら良いよ?ここで休んでてよ」
「まてや…こりゃ武者震いやで、戦いとーてうずうずしとんねん。行くで〜!ぶっ倒したるわ!ウイルスバグがなんぼのもんじゃい!」
よーし!と全員で叫び、カオスの後ろに付いた。
――かっこいい事言ってるつもりだろうけど、何故に関西弁?さっきまで、もろ共通語だったじゃん…まあ良いか。
ツッコミはさて置きとりあえず、先へ進んだ。

「うわ〜、これは…大き過ぎやしませんか?ヘルバさん…」
巨大な浮遊物体。体中にウイルスバグ特有の発光がある。
「大丈夫よ。倒しなさい。援助するわ」
さらりと酷い事を言われたが、文也は何故か慣れていた。酷い事を言われると父を思い出し、苦笑が抑えられなくなる。だが、苦笑だけで抑える事が出来る。父のお陰(?)で手に入れた特異体質だ。
「じゃあ…行って来ます。ヤアァァァ!」
手持ちの攻撃力が一番高い双剣で、切り付ける。
名前は『$目α』らしい。やはりウイルスバグ。しかも、三体とも同じ名前。同じモンスターだ。属性は雷
「ビアニドーン!」
ルカが使った魔法により、上から紫色の岩石のような物が二つウイルスバグの回りに落ちる。属性ダメージによって結構なダメージのようだ。
「これが俺様の実力さ!ハハハ!」
――あれ?一人称変わった?
いい加減ツッコミたかったが我慢…
しかし、今の攻撃のお陰で結構助かった。それに攻略法も解った。双剣を魔法の双剣に持ち替えた。カオスはビアニドーンの岩石のような物が一つしか落ちない技を使った。
「アニドーン!」
カオスにはそれがSP的に精一杯であり、それ以上の技は無い。
「メアンゾット!」
クリスも地面から紫色の生々しい剣山のような物が二回生えてくる技を使う。
しかし、装備が換わっていないように見える。
――防具を変えたんだ。
防具にも魔法が備わっている。防具は武器と違い、外見からでは解らない。
「ありがとう!クリス!」
クリスはニッコリと微笑み、
「私、闇の属性ステータス高いんだ〜。協力するよ!」
敵に攻撃をされてもヘルバやブラックローズが回復してくれる。リョウとカオスとルカとクリスで属性攻撃。一体一体ではなく一気に削る。
そして、三体一気に

【PROTECT BREAK OK】

「来た!カオス!お願い」
クリスの掛け声に頷き、カオスはドレインアーク(数体同時にデータドレイン)を行う。
「行くぞ!」
六人で一気に叩く。『屍目α(アルファ)』を。
クリスがメアンゾットを使って全てダメージ無しと言うSPの無駄遣いをしてしまった。
「うわ〜ん…闇抵抗じゃん〜、しょうがないなぁ…ライローム!」
電気属性の竜巻を発生させた。属性ダメージにより大ダメージ。しかし、元のHPが高く、あまり効いている感じは無い。
どんどん攻撃を加え、もう少しで倒せる所まで来た。
すると『屍目α』が回転し、一体化した。一体になると『屍目β』となった。
「嘘!最悪!もう、いやぁ…」
ブラックローズが半鳴き声で大剣を下へ傾けた。気持ちは解らなくないが相手は一体だ。そうカオスは思った。
しかし、HPが更に高くなっていた。『屍目α』の三体分より高い。
「仕方ない…あの技を使いましょうヘルバさん!」
「仕方ないわね…」
二人は持っている杖のような武器を床へ突き立て、杖と杖の間にモニターが現れた。ヘルバがその中に飛び込むと、『屍目β』は…

【PROTECT BREAK OK】

「二回目のデータドレインはあんまり薦められる物じゃないんだけど…」
二度目のデータドレインは見事に当たった。しかし、カオスの侵食ゲージはイエローゾーンとレッドゾーンの中間にあった。これ以上は危険だがエレメントと戦わなければならない。
「後一発は危険だわ。ここは撤退を…」
しかしカオスは、
「カイ…イタチ…カズ…皆…助けるんだ」
全員が驚いた。危険すぎる。
「何言ってるのカオス!カオスが居なくなったら何もかも無駄になるじゃない!ダメだよ!カオスが居なくなるなんてぇ…あたし…ダメだよ…」
クリスが悲しげな表情でカオスを見つめる。
「そうよ!アンタまで居なくなっちゃたまんないわ!」
ブラックローズも怒鳴りかける。
ヘルバは更に釘を打とうとする。
「だから撤退よ」
「しません」
「命令よ。撤退しなさい」
「こちらリョース。カオス!撤退だ。君が居なくなるわけにはいかない」
「いきます。一人でも」
「命令違反する気か!意識不明の人間を助ける為には今は撤退すべきだ!この作戦はあくまで調査だ。深追いはするな。転送リングを…」
「退きません。もう僕は退きません。行きます」
「馬鹿な!ヘルバ!奴を抑えろ!」
「フフフ…何か考えがあるんじゃない?」
「何を馬鹿な事を!早く取り押さえるんだ」

「さあ…皆…行くわよ…」
「クッ…知るか!」

六人全員が霧の中へ消えた。

*

「ジ…ジジジッ!」
ノイズが走り中央に黄色の宝石、それを囲みながら回る白、青、茶色、緑の宝石そして、割れた赤い宝石が現れた。
宝石はノイズに取り込まれ、中央の黄色の宝石だけが八つの方向に稲妻が走る。エレメントの証。そして、エレメントが現れると言う助言。

現れたのは、金色の杖を持った美少女だった。

「私はエレメント“雷鳴の女雷神『ヴォルテ』”よ、宜しく。でも、今日がさようならの日ね…あなた達をデータドレインしてあげる。こないだは、私の不在中に『イフリート』がやられたみたいね。敵討ちって訳でもないけど…覚悟しなさい」


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所詮私はプログラム…
せめて…人間らしく…振舞うだけが精一杯…
明るいだけが取り柄だから…

「今回の調査はリョウを含めて行って欲しい。後のパートナーは君で決めてくれ」
突然無茶な事を言うリョース。そんなに突然言われても無理である。
すると、一人分の転送リングが現れた。その転送リングからは一人の何の職業だかわからない格好をした、少年が立っていた。
「僕を忘れないでくださいよヘルバさん!『.hackers』はそんなに援助ばかりやってても進みませんよ!我々『.hackers』こそ!最強の戦力になる筈なんです!」
どうやらヘルバの部下のようだ。そんなに『.hackers』と言うのは組織的だとは思わなかった。
「はぁ…全くあなたは…じっとしてなさい」
ヘルバは呆れた声で言う。
しかし相手も相手だ。流石ヘルバの部下。口述は上手い。
「僕はあなたの右腕として頑張って修行しているのです!『.hackers』の戦力不足を補うために!その成果を…」
ヘルバは頭を抱えていたが、急に少年の方を向いた。
「何を言っているの?私はあなたを右腕と言った事は無いわよ。良い部下だと思っているけど」
一瞬で周囲が静まり返った。
クリスは二人をポツンと見つめ、少し大きめのワンピースの袖を口元へ当てた。
――うわ…一発でリアルの皆は白い目だな…
と文也は思った。確かにリアルの人々は白い目をしていた。
「とッ兎に角!この人は誰ですか?ヘルバさん!」
すると、何故か少年が自己紹介をしてきた。
「我こそは!『.hackers』のリーダーヘルバの右腕ルカだ!『.hackers』では主戦力、司令部を担当している!5人の人間を纏めているのはこの僕だ!どうだ!スゴイだろ!ハハハハハ――」
ただ人手が足らないからその地位なのでは?とツッコミを入れたくなるがあえてカオスは言わなかった。
――言ったら可哀想だよな…
文也の優しさで…
「仕方ないわね…ごめんなさいねカオス。連れて行ってあげて」
「はっ…はぁ」と苦笑いするカオス。
笑いつづけるルカ。不安は隠し切れない。
「では、へルバ、クリス、ブラックローズの女性班でパーティを組み同行してくれ。私はお前達に何かあったらの為に備えておく。以上だ。解散!」
――あっ…あぁ…ブラックローズ〜〜〜クリス〜〜〜…
初対面の人と敵の調査…
危険すぎる。たった一つのフィールドだが、気持ち的には大冒険が待っているような気がして文也は少し憂鬱になった。


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まだ解らない?
そう…なら良いわ…鈍感なのね…
私も…PCなら…

「ここが…Θタウンドゥナ・ロリヤック」
「そーそー。って言うか…みんな待ってるんだから…早くいこぉ」
「うん。そうだね…」
下を見ると雲で見えない…ここは雲の上の様だ。
ここが高山都市『ドゥナ・ロリヤック』
壊れた場所を無理矢理修復し、一般公開したのだろう。あちこちにウイルスが居るフィールドのように赤い斑点がある。それを知らないPC達は無邪気に走り回っている。
「あはw空中浮遊w」と言って橋の穴が空いた所に乗れるとはしゃいでいる人も居れば、
「プチグソ…何となく…可愛いかも…」と言っている悪趣味な人も居る。
「何処行こうかな…」とカオスゲートで悩んでいる人も居れば、
「お金が欲しいよぉ」とのんきな事を言っている者も居る。
「ちょっとここ…何かマク・アヌと全然違うよね…変な斑点あるし…」と多少怪しんでいる者も居れば、
「斑点踏んだ〜w」と訳の解らない事を言っている人も居る。

とりあえず、指定されたワード『Θ空疎なる 因緑の 深淵』を選択し、転送された。
転送されたフィールドは真っ白で何もない。だた、人が4人立っている。
その中にはブラックローズも居た。ヘルバも居た。しかし、何故かショップの店員のNPCも居る。
「あ、来たわね」とブラックローズ。
カオスはぼんやりとNPCを見つめる。すると、そのNPCは突然話し出した。その声は低い。
「何を見ている」
するとヘルバ。
「やっぱり石頭は直らないわね」
目は帽子のような物で隠されているが、呆れている事は明らかにわかった。
「何を!」
「この子は知らないんでしょ?あなたがイフリート戦を見ていた事を。そして、シンクロ検査データをこっそり入れておいた事を。あなたが管理人だと言う事を」
管理人ならNPCを使えると言う事でとりあえずカオスは納得した。
「むぅ…」
ヘルバの方が上手だった。
言葉で明らかに押し負けている。
そんな中、その様子をただじっと見つめる一人の呪紋使いが居た。男のPCなのに何処か可愛げがある。
「あのさ…ブラックローズ…この子誰?」
「この子?あぁリョウね。アタシもよく知らないんだけど、カイトの友達らしいわ」
すると、もじもじしながらリョウが、
「よ、よろしくお願いします…」
初めての相手にクリスはいつも通り
「よろ〜♪」と明るく言った。
カオスも合わせて
「よろしく」と言った。

ほのぼのとした話の後、リョースが本題へ移す。
「今回呼び出した理由だが、多分皆聞いていると思う。『.hack事件』が再発する可能性が出てきた。カオス、お前は知っていると思うが相手はあいつらだ。正式名称を『エレメント』と言う」
クリスが後ずさりしたような気がしたが気のせいだった。
「『エレメント』…元素ね」
「その通り。本当は私が作ったのだが、管理しきれないデータだったのだ。元は、属性データだったのだが、いつの間にかに謎のプログラムによってAIへと変貌した。それが暴走したのだろう。この様な事態になった。しかも、光と言う属性も増えている。光の属性についてはまだ解らん。後、木属性がどうなったかだ。そこで、カオスは『エレメント』達に対抗する力を持っている。だから、調査して欲しいのだ」
フフフとヘルバが笑った。
「何が可笑しい」
「素直に『協力してくれ』と言えばいいのに(笑)」
「何をぉ!」
「ほらほら怒らない。『石』頭が『焼き石』頭になるわよ」
「クッ…」
なんだかんだでヘルバとリョースは仲がいいようだ。
「で、何処へ行けば良いんですか?」
「『Θ選ばれし 失意の 荒野』だ」
「了解」

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私の愛する人?それは…いずれ…解る…
傷付けると言うなら…私はあなたを傷付けなければならない…

「おはようございます」
文也がサッカー部の部室の扉を開ける。
そこにはいつもの少女が居た。
「おはよう」
やはり、二十分前には居る花美。
この二人だけの時間が意外と楽しみだったりする。
でも、今日はいつもの話題が無い。
仕方なく…
「昨日は楽しかったですね」
と微笑んでみる。
昨日の事を思い出したのか、花美はボッと火が付いたように顔が赤くなる。
「ご、ゴメンね…昨日は…」
「え?何でですか?」
「お金…結構使わせちゃったから…」
歩いて帰った事は絶対言えない状況だ。
笑い話ではなく皮肉な話に成ってしまう。
「大丈夫ですよ〜全然平気ですって、こう見えて僕も少しはお金持ってるんですから〜」と法螺を吹く。
解り易い嘘だっただろう。花美の家を見た時の顔が解れば誰でも解る。
「あの時やっぱり私が払えば…」
「大丈夫ですって」
「なら…いいんだけど…」

昼。
文也はたまに、屋上で昼食を取る時がある。
この学校の屋上は、学校に生徒が居る間は開放されている。
校長が熱血青春男だからだ。朝礼では決め台詞が「お前ら〜青春だ〜」で地域中に有名。
しかし、屋上は特に誰も使う訳ではなく、一海と拓実が居なくなってから一回ここへ来た。
その時から気に入ったらしくまた来たのだった。
「ここは…やっぱり落着くな…」
何処か根暗である様にも見えるが気にしない。
今日は珍しく来客が来た。幸か不幸かと言われると不幸の方か。
「ふ〜〜〜〜み〜〜〜〜や〜〜〜〜!!ど〜〜〜〜こ〜〜〜〜だ〜〜〜〜!!」
聞き覚えのある声。サッカー部の先輩。西川公平だ。
「ちょっと〜待って〜西川君〜!」
これも聞き覚えがある。春山花美だ。
ドカーンと鉄の扉が壁に当たり大きな音を立てる。
「文也!おめぇ…春…春山…泣かしたらぶっ殺す!」
「は?え?な…何ですか?」
文也は訳が解らない。当然である。
西川公平が花美に告白し、ふられ、しくこく理由を聞き(そのしつこさもふられる理由だが)、文也の事を言ってしまったのである。
走り去る公平。花美とすれ違った。
今度は花美が来た。
「ゴメン…また私の性で…」
文也は未だに意味がわからない。それを察した花美は訳を言う。
「そういう事ですか…西川先輩…少し可哀想ですね…」
花美は少し微笑んだ。
「いや…ゴメン…やっぱり文也は優しいんだね…」
「そ、そうですか?」
「うん」
チャイムが鳴った。昼の休憩が終わる合図であり、次の授業の用意をしろと言う助言。
「それじゃあ…私…ずっと待ってるから…早く終りにしてね…」
「もちろんです」

『The Wolrd』いつもあまり変わらない世界でもある。
カオスゲートの前にはやはりいつもクリスが居る。
「やっほ〜カオス〜さっきヘルバが来て、管理人が新しい情報を得たらしいから来てくれって〜Θも開放!ワードは『Θ空疎なる 因緑の 深淵』だよ〜。ヘルバが仲間を何人か呼ぶって〜」
――なんでメールじゃないんだろう…まぁ…信用できるからいいか

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影が二つ…
「少し想いを言わせて…
嗚呼『ウンディーネ』様…
私が居る時はいつもそばに居てくれた…
あなたはあの時から変わってしまった…
女同士ですら愛しく…
AIにも愛がある事を教えてくださいました…
あんな事が無ければ…
あいつさえ居なければ…
あいつが現れて…
腕輪の持ち主に『私達共通の愛する人』があの方に寄生した…
その時から…
『シャドー』あなたは裏切った…
『シャドー』あなた…
あなたはなにがしたいの?
あなたも愛していたのでしょう?
『私達共通の愛する人』を…
なら…
私達で救いましょう。」
゛漆黒の魔術師"は風となり、逃げ去った。
「あなた達に協力する事は出来ない…私は…私の愛する人が居るのだから…」







「プログラムにも…心はあるの…AIにも…恋は出来るの…」

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大きめの肩掛け鞄は大きく膨らんでいる。
家族にお土産を買い過ぎたらしく、金欠。
と、言うより大事態だ。
「どうしよう…帰れないじゃん…」
花美の家へ行ってお金を借りるか、それとも、電車で十分の道を歩くか。
辺りは暗い。歩いて帰るには少しばかり危険だ。
蛍光灯が少なく迷いやすい。迷った瞬間もう二度と帰れないと考えた方が良い。小さい頃の記憶がそう警告を出した。
文也は小学三年生の時に自転車でここに来て、帰れなくなり、お巡りさんのお世話になってしまった事があった。
今となってはトラウマのようになっている。
「だからって…春山先輩の家に戻るのも…もう駅まで来ちゃったし…」
もう一度、財布を見る。やはり、足らない。たった十円だけ…
「しかたねぇ…線路辿っていきゃ迷わないだろ…」

不正エリア。誰も侵入できない。管理者も知らない。ヘルバですら知らない。本当は存在しないかもしれないエリア。真っ暗だ…そこでは女神達によって奇妙な雑談が行われていた。
「“地の女神『グランディス』”…あたしが、あいつを倒せば良いのね?」
「そうよ…それが、彼の…いや…今は寄生してるんだ…ゴメンね…あたしには出来ないから…『シャドー』に愛着みたいなの湧いちゃってて、あいつにいつも寄り添ってなければね…」
「フフフ…」
「なぁに笑ってんのよ〜」
「いや…ねぇ」
「なにぃ〜」
「不正データ消去用腕輪プログラム搭載AIもよく出来てるのね…リョースが作ったのにリョースに管理できないのはその性ね…」
「どういう意味よぉ〜“雷鳴の女雷神『ヴォルテ』”」
「私達も一応女って事よ…ウイルス混じっちゃったけど…」
「私達も…“灼熱の女死神『イフリート』”みたいに成っちゃうのかな…辛いのを隠すのは大変だよね…“漆黒の女魔術師『シャドー』”を私は憎むわ」
「あんなやつ、暑苦しいだけよ。ねぇ“白光の女神『レム』”」
「私は好きだったがな…お前はどう思う。“風の女神『シルファ』”」
「趣味悪ぅ〜、“水の水神『ウンディーネ』”そう思わない?」
「それはさて置き…今『シャドー』は放っておきましょう。私達エレメントの元はこの世界の全て。その世界を今作り直そうとしてるのです。ゆっくりで良いのです。早過ぎるとリョースに気付かれます」
女神達の雑談は一瞬にして静まった。


「やっと…帰れた…」
気が付けば夜の十時。自転車に乗り、颯爽と漕ぎ出す。
「夜の風も気持ちいな」
ぼそっと独り言を言い、また少し笑顔になった。
家まではそんなにかからなかった。だた、歩いた時間が長かったからそう感じるだけかもしれないけれど。
歩いている時から文也は笑顔が絶えなかった。
――僕を応援してくれる人は沢山居るんだ。一人じゃない。
嬉しかった。
クリスが居る…春山先輩が居る…ブラックローズが(まだ良く知らないが)居る。
みんなが支えてくれる。
それが嬉しかった。


そんな時、クリスに電気を帯びた影が少しずつ近づいている事を文也は知る筈が無かった。

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よくここまで来たものだ。
しかも花美の奢りで。
文也が住む蔵番町は関東の端の端。
そこから今居るのは東京。
最近出来た新しい遊園地へ行くらしい。
「あたしが呼んだんだから、あたしに払わせて」と行って止まず結局、代金は花美持ち。
文也は失礼じゃないかと不安になったが、花美の財布を見て驚き、消えた。
ざっと三十万は入っている。文也は硬直した。そして、そのまま連れて行かれた。

駅から徒歩で十五分。
素晴らしいほど大きな遊園地に到着した。
「ふふ〜ん。どうだぁ〜」
花美は自慢げな表情だ。
「ま…まさか、ここまで来るとは思ってませんでした…」
文也はそのまま口に出した。それはそうだ。
「さっ!行こうか」
そう言ってまた手を繋いだ。
周りからみれば、美少女(引っ張っているから積極的な正確はに二枚目半の少年。漫画で見るようなカップルだと思われた。
引っ張られるにプラスして、花美が突っ走っている方向は…文也の苦手な絶叫マシン。他にもおばけ屋敷も苦手。
――今更、絶叫マシンは無理何て言えないよなぁ…
一方花美は
――男の子はきっとこう言うの好きだよね!良かった〜あたし三半規管強くて
口に出さずに豪快極まりない誤解だ。
まず、ジェットコースター。あまりに高い…高すぎる。そう言えば百メートルあると聞いた。文也には絶対不可能だった。しかし、乗るしかない。

ガシャン。と固定器具が下ろされる。
もう後戻り出来ない。と言う意味にも捉えられてしまう。
横を見ると…花美が楽しそうに笑っている。やはり可愛い。
――春山先輩が楽しいなら良いか。
文也は今回のデートの意図をすっかり忘れていた。
そのまま発進。不安定な音を出しながら坂を登る。この坂で勢いを付け、後は放って置くらしい。それが、ジェットコースターの仕組み(仕組みと言えるほどではないが)だ。
「キャァ〜」と花美は楽しそうに声を出す。しかし、文也は無言。ほぼ気絶だ。そんな事も知らない花美は楽しそうにまた笑顔で叫ぶ。
「はぁ〜楽しかったねぇ」
花美は笑顔。まさか、誰も絶叫マシンの後だとは思うはずが無い。
「は…春山先輩…強いんですねぇ…」
ジェットコースター三周はしただろうと見えるが一周しかしていない。
「うん!あたしこう言うの大好き!」
そのまま、今度は名前も知らない巨大な柱に取り付けられた椅子に座り上まで上げられ落とされるマシン。花美によって異常なほど高速回転したコーヒーカップ。ゆらゆらと揺れる船。おばけ屋敷。文也の苦手分野は全滅した。気が付けば夕方。休み無く苦手分野に乗らされていたらしい。
「次はあれ!ちょっと休憩の意味も予ねてね♪」
指差したのは大きな大観覧車。文也にやっと休める時が来た。
「わかりました!乗りましょう!」
文也は急に意欲的になった。

密室。
この場には二人しか居ないと思うと、花美は赤面する。
なんだかんだと言えども、か弱い少女である。
「ふぅ…やっと落着いたって感じですね」
か弱い少女だけれども、積極性に関しては誰にも負ける事が無いだろう。花美は赤面しながら突然とんでもない事を言い始めた。
「隣…言って良いかな…」
「え…は、はぁ…良いですけど…」
密室。夕方と夜の間。美しい景色。今は二人だけ。気持ち的にも二人だけの世界。
――告るなら…二人しか居ない…今が…一番…かな…
「あの、文也…文也の事…好き…なんだ…」
突然の告白に文也は戸惑った。
どうすれば良いのか解らない。
今まで二,三度、文也は告白された事があったが別に何も感じなかった。好きでもなかったから全て断った。
しかし、今回は違う。心臓の音が大きくなり早くなる。顔が熱くなる。何か言いたくても何を言いたいか忘れてしまう。口がパクパクと開いたり閉まったりする。やっと、言いたい事が纏まったと思ってもそれは、
「少し、考えさせてもらっても良いですか」
涙目の少女は頷いた。

口数がそんなに多くないまま、くらつが駅まで着いた。帰りは自腹にさせてもらった。
――答えは…いつ言うかな…もう決まってるけど…
「じゃあ。僕はここなので」
花美は次の駅。文也は先に下りようとした。
袖を何かが噛んでる感じ…いや、握られている。振り向くと花美が袖を握り締め、引き止めている。
「ご、ゴメン…じゃあ!明日ね」
そう言って手を離すが文也は降りなかった。
「家まで、確り送らせていただきます」
「ゴメン…ありがとう…」
電車の乗り越し料金を支払い、殿町へ降りた。

花美の家の前に着いた。
巨大な家に文也は驚きを隠せず。顔に出てしまった。
「家…大きいですね…」
「これでもこの辺では小さい方なんだよ」
文也は更に驚きが顔に現れた。
「んじゃあ、今日は付き合ってもらっちゃってありがとうね。また明日」
「はい」
そう言って花美は門を開ける。
――今…今しかない!
告白の返事である。
「あの…さっきの答えですけど…」
花美は「えっ」と言いながら振り返った。

「今は、一海や拓実を助けるだけで…精一杯なんです…ごめんなさい」

花美は涙を貯めた。いつ溢れ出すだろうかと言わんばかりだ。
「ゴメンね…そうだよね…文也…忙しいしね…あたしったら…勝手に…結局自分勝手だね…ゴメン…ホントにゴメンね…」
その言葉を聞いた瞬間。

自分が憎たらしくなった。

文也は自分の中にもう一人自分が居る気がした。
その中の『春山先輩を愛しく想う心』が『中途半端な自分』に打ち勝ったのだ。
「今は…です…二人を助けたら…もっと沢山出掛けましょう。もっと、一緒に居ましょう」
その一言を聞いた花美は溢れかかっていた物を溢れさせた。
少し驚きながら。
200607162011000.jpg


「ありがとう…」
花美はそのまま一晩中嬉し泣きをしていた。
母はその姿を微笑み、見守った。



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いよいよと言うべきか。とうとうと言うべきか。
デートの日である。

豪邸が立ち並ぶ高級住宅街。
文也の住む蔵番(くらつが)町の隣町、殿(でん)町である。
それぞれの町の由来はわかり易く、殿町が元は城がすぐ近くにあった城下町。そして、蔵番町がその城下町で売られる食べ物以外の物をしまっておく場所だったと言う。
春山花美は殿町でも安めの家に住んでいた。
とは言えども、周りの家より少し小さいだけであって、別に安い物件では無い。
年収一千万以上でないと買う事は出来ないだろう。
文也がお嬢様を想像したのはこの性であった。
本当にお嬢様だったからだ。
花美は取って置きの御めかしをしようとしているのか、髪を弄っていた。
服装はシンプルにワンピース。
シンプルだからこそ良いのだ。
派手だったり、やけに模様やマークがあると花美に似合わない。
それが解っている花美は自分でもシンプルなものしか買わない。
「これをこうすれば…う〜んイマイチ…」
色々と試しながら、いつも下へ降ろしている肩にかかる程度のふわふわなパーマ髪をゴムを使って色々な髪型にしている。
「顔は、まだスッピンでいけるかな?ちょっと化粧してみるかな?」
全く持って素顔で問題無い。
学校では化粧が禁止されているが、それでも美少女で居られる彼女は正に美少女だった。
「う〜ん…やっぱりこれが良いな」
結局ツインテールである。
しかし、これが一番である事には変わりなかった。
一番まともな訳ではない。
一番可愛く見えるのだ。
どんな髪型にしても似合う。
髪型が決まり、母親を呼んでチェックさせる。
「うん。良いじゃん」
そう言うと母親はピンクがかかっているファンデーションを少し頬に塗る。
白い肌の頬に少しだけ、ほんのすこしだけのファンデーションにより、可愛らしさもまた一層増す。
「これで今日はバッチリね」
そう言って母親はニコっと笑った。
母親には「友達と遊園地に遊びに行く」と言ってあるが気付いているだろう。
こう言う所は鋭いのだ。
玄関でサンダルを履き、完璧な状態で花美は出発した。
くらつが駅で待つ為に。

その頃文也は、寝坊し、大急ぎで着替えていた。
昨晩は全く眠れなかったのである。
何とか目の隈は(奇跡的に)抑えたが眠い。
飲めないブラックコーヒー(分量を間違えてただでさえ苦い)を一気のみし、眠気を抑える。
髪を櫛で梳かすと同時に、歯磨きと言う神業さえ得とくした。
文也も文也でなかなか二枚目半ぐらいである。
普通の男には負け劣らない位の顔は持っている。
運動神経はサッカーのお陰で良い方だ。
問題は学力。あまり良くない…
受験の時は頑張ったが、それ以降に頑張った覚えが無い。
「ゲホ!」
歯磨き粉が気管に入り、咽た。
急ぎすぎた結果である。髪は良くなったのにまだ梳いていた。
「フガ!モゴォゴゴガ!(うわ!もう行かなきゃ!)」
時間が相当押している。
このままでは間に合わない!
急いで嗽をし、家を飛び出した。

花美は電車に乗りながら、文也が入部してきた時の事を思い出していた。
――そう言えばあの頃だったなぁ…好きになったの。殆ど一目惚れだけど
それは四月の事だ。
花美や文也の学校は入部が異常なほど早い。
四月の終りには入部してなくてはならない。
文也達は入学してすぐにサッカー部へ来て、入部届を出した。
そんな三人の面倒(いわゆる一年の御守役)をしていたのが、花美であった。
花美の好きなタイプ。それは、サッカーが上手くて顔も良い(ここはあまり重要視しないが)男子だった。
グランドの隅。三人が、花美の前で軽くて移動が出来る小さなゴールを使って、いつもの三人でやっていたプレイを見せた。
三人の中で正確なパス。完璧と言えるほどのポジション取り、そして正確なシュート。
一海は少しダッシュのタイミングが遅い。
拓実はポジションの位置がずれている。
だが、文也は申し分無かった。
――これ!これが私が望んでた子…
始めは、サッカーの選手として。
マネージャーとして欲しかった選手。
ただそれだけだった。
それから、良く文也に話し掛けるようになった。
話している内にどんどん好きになっていた。
どんな話も確りと聞いてくれる文也の優しさにも惚れていたのだった。
――フミ君は優しいんだね…フミ君なら私…ずっと一緒に話してたいと思えるな…
そう思った瞬間。文也に恋心が動き出した。
さらに、これは花美の初恋でもあった。

「次は〜くらつが〜くらつが〜御出口は〜左側です」
隣町とは言え、電車で十分掛かる。
改札を通り、外へ出た。

「うわ〜〜〜!間に合って〜間に合って〜」
人目を気にせず、自転車で疾走する。
やっと駅が見えるような距離に来た。
見覚えのある顔が髪形を変え、待っている。
遠くてどんな髪形なのか解らない。
自転車を止め、全力で駆ける。
ギリギリセーフ(微妙にアウト)で辿り着いた。
ゼエゼエと荒い息を整え様としている文也を見つめ、息が整った所で
「おはよう、文也」
と声をかけた。
「おはようございます」
パーマにツインテール。
ちょっとだけ付けられたファンデだけと言う薄化粧が元の美しさを表している。
文也は正直に
――春山先輩…可愛い…かも…
と思ってしまった。
「それじゃあ行こうか」
そう言って花美は文也の手を握った。
文也は躊躇わなかった。
躊躇う理由が無かったからだ。
(恋愛感情の意味で)好きなわけではなかったが、嫌いでもない。
この中途半端を保つのも文也の特徴であった。

いよいよ明日は春山先輩とのデートの日。
今日は土曜日だ。部活しかない。授業も無い。
だが、午前八時から午後四時まで有ったら、授業が有っても変わらない。
そんな文也を朝っぱらから悩ませるもの…
それは一通のメールだ。

送信者:春山 花美
件名:いよいよ…

いよいよ明日だね。
頑張って今日を乗り切ろう!

文也にとって乗り切るのは明日だった。
嫌いな訳ではない。
好きだと言えば好きなのだろうか…
でも、それは先輩後輩として。
恋愛感情とは違う。
――「デート…だね…」
あの時の顔。
まともに見れなかったが、一瞬だけ見たときを思い出した。
赤面。
思い出すと文也は顔が熱くなる。
こんな事で大丈夫なのだろうか…
そう考えると、明日がどれだけ大変かわかる。
確実と言って良いほど大変だ。
色々考えていたら学校へ着いた。

気が付けば二十分前(春山先輩が必ず一人で居る時間)に来ていた。
「はぁ…どうすっか…」
文也は仕方なく中へ入った。

「おはよう」
赤面の春山先輩が出迎えた。
「お、おはようございます…」
そのまま、三分間。二人は黙り込んでしまった。
――このままじゃダメだ…
そう思った文也は、昨日の『The Wolrd』で起こった事の報告をした。
勿論、一人でフィールドへ行った理由は話さなかった。
「へぇ…クリスさん。凄いんだね…」
「でも、どうやって…普通じゃ考えられないじゃないですか…」
春山先輩は少し悩み、
「ハッキングとか」
と言った。
――.hackersとか言うのの仲間かな?となると、ヘルバが何か知ってるかも
使い方を知らない物(脳)を使う様な顔をしながら悩む文也を見て春山先輩が声をかける。
「違うかな?」
「よく解りません。でも、それならヘルバが何か知ってるんじゃないでしょうか?」
「そうだね。聞いてみて」
話が終わった辺りから、ポツポツと人が集まって来る。
全員が揃い。練習を開始した。
一海も拓実も居ない。
仕方なく、ベンチには新しく一年が導入された。
しかし、一海や拓実の様には絶対に事々が進む筈が無い。
文也の良質なパスを受け取れなかったり。
酷い有様だ。

やはり、長かった。八時間の練習は長かった。
荒い息を落着かせ、絞ると汗が出るほどになったユニフォームを着替え、シューズや、ユニフォームを入れた袋を鞄に詰め込み、家へ帰ろうとした。
学校を出てから少し来た所。
「待って」
と声がした。
振り返ると走ったらしく、荒い息を立てならがら立っている春山先輩が居た。
「自分勝手って解ってる。けど、明日は来て。お願い。駅で待ってるから」
文也は強い衝撃を受けた。
「春山先輩は…自分勝手なんかじゃないですよ。必ず行きます」
――そうだ…僕の為に誘ってくれてるんじゃないか…なのに僕は…
「うん!ありがとう!」
春山先輩は天使の笑みとも言えるような笑顔を見せ、帰って行った。

クリスのおかげで、攻撃が進む。
ダメージは食らっているように見えないが、確りと食らった数値が出ているから、食らっているのだろう。
素早い動きをするウイルスバグと距離を置きながら、カオスも『魔法の双剣』を装備し、戦う。
クリスほどの威力は無いが、ダメージを与えている事は確かだ。

【PROTECT BREAK OK】

「カオス!今だぁ〜」
「うん!」
光の矢がウイルスバグを貫き、ウイルスバグは普通のモンスターへと戻る。
「ガンローム!」
クリスが地属性の竜巻を起こす魔法を使う。
しかし、効かない。
「あれ〜?魔法耐性?」
データドレインした瞬間に、元が魔法耐性だったらしく、魔法が効かなくなった。
カオスは武器を戻し、走った。
どうやら本当の名は『岩石オーガ』らしい。
物理攻撃が使えないクリスは後ろで回復。
カオスが有りっ丈のスキルを使い倒す。
「ズトーン」と大きな音をたてる。そして、倒れ。ゲームらしく消えた。

カオスはクリスに、気になっていた事を話す。
「ねぇ…クリス…」
「何?何?どーしたの?」
いつもに戻った感じもするが、やはり頼りがいがあるように見える。
「どうやって…ここに来たの」
「どうして?」
真面目な質問の意図を掴んでいないのか…クリスはニッコリと笑う。(アクションコマンドだが…)
「だって、このゲームは三つの『ワード』でエリアが構成されるじゃないか!
しかも、そのワードはどんどん増える。つまり、エリアは無限にある筈じゃないか!それなのに、たった一つのワードを見付けるなんて不可能だ!」
クリスはう〜ん何でだろう。と思っていると一目で解る様な顔をする。
事実「う〜ん…う〜ん…」と唸っている。
やっと口をまともに開いたと思いきや
「勘?そう!女の勘ってやつよぉ〜」
意味不明だ。
勘で当てられるような程、たやすい物ではない。
無限の中からたった一つをたった一回で的中させたのだ。
――でも、まぁいいか…助けてもらったんだし…
「へぇ〜…」とカオスは空返事をし、タウンへ戻ろうと言って、『妖精のオカリナ』を使ってフィールドへ戻り、ゲートアウトした。

タウンへ戻った。
文也は一瞬だけFDMを外し、時計を見ると午後十一時だ。
「クリス。今日は遅いから僕はもう落ちるね」
「え?もうそんな時間?解った〜今日も楽しかったよぉ〜」
そう言って手を振った。
文也は少し笑顔になれた気がした。

一人でフィールドを駆け回り。
少し寂しさを感じながらダンジョンへ入った。
「たまには良いよな」
と、一人しか居ないのに考えている事と逆の事を言っている。

脳裏に焼き付いて離れない言葉。
あの時の顔。
それが、一人で居たいと思わせる、がそれだけじゃなかった。
この、もやもやとした気持ち。
――拓実…一海…
親友が居ない寂しさ…
二人が居れば…
忘れられる訳じゃないが、楽しめる。
現実から逃げようとログインしたが、結局は意味が無い。
只管、自分より弱いモンスターを倒すだけ。

何も楽しくない。

奥へ進むと一本道になった。
曲がる必要が無いのは迷わなくて済むから助かる。
一本道の先に何が待っているのか。
それはまだ、カオスに分かる筈が無かった。
奥へ…奥へ…
長い一本道を進んで行く。
敵はあまり居ない。
神像まだ遠いのだろうか…

「ジジッ…」

「何だ?」
一瞬ノイズが走った気がした。
ノイズと言えばまた、ウイルスが出ると言う事ではないのだろうか…
予想は的中した。
蜃気楼を作らない。紫色の炎。この前、イフリートと戦った時に見た『赤い炎』と同じ。
炎では無く霧なのか?
だが、それはカオスに見えていなかった。
突き進む事。現実から逃げる事。いや、現実を忘れる事。
その為に走った。
走り続け、悪魔の元へ…

「ジッ…ジジジジジッ!」

気が付いた瞬間。それはもう手遅れだった。
カオスの目の前にはウイルスバグ。
また、攻撃してもMISSばかり出るのだろうか…
「やるしか…無い…」
カオスは双剣を構えた。
「ハァァァァ!」
カオスはウイルスバグに向かって双剣を振った。
名前は『Ψ石オー∂』やはり文字化け。
しかも物理耐性(魔法のみしか効かない)だ。
瞬時に後ろへ、それはいつもならの話…
ウイルスバグの持っている大きな発光した石斧が振り下ろされる。
大ダメージを受けHPは一発で残り少ない。
そして、回復する暇も無く、また斧が振り下ろされる。
――しまっ…

「リプス」

カオスへ誰かから回復魔法がかけられる。
同じフィールドに人が居るなんて滅多に無い。
文也はカメラを動かし、カオスに後ろを振り向かせる。
「何で…何で居るのさ…クリス…」
居る筈の無い少女のPC。
紺色のワンピースが靡く。
「助けて貰っといて何ではないんじゃない?」
「…ありがとう」
「再戦だねぇ!行くよ!」

この時のクリスは…とても頼もしく見えた。
いや、“この時”では無い“この時から”だった。
いつもの授業を終え、いつもの…では無い部活を終える。
春山先輩の突然の誘い。
あれから、文也は春山先輩に話し掛けられずにいた。
目が合うと思い出してしまう。
――「今度…遊園地にでも行こうか。気晴らしに」
――「デート…だね…」
そして、思い出すと顔が熱くなり、逃げる事しか出来なくなる。
今まで付き合いや恋愛をした事が無い文也は、どうすれば良いのか解らなかった。
――目が合わせられないなら…メールだよな…
そう思った文也はメールを送ろうとした。
でも、何を書きたいのか。文面を開いて解らなくなった。
走るしか出来ない。
今は…忘れよう。
休みになるまで後3日ある。
その間に何とかしよう。
でも、何を何とかすれば良いのだろうか…
何を何とかしたいのか…
全て解らなかった。
頭の中は真っ白だった。
何も考えられない。
気が付けば家の前。
扉を開け、部屋へ駆け込み、『THE WOLRD』にログインした。
――現実から逃げれば何か解るかもしれない。

転送完了
いつもの様にいつもの女呪紋使いのPCが立っている。
「いっよう!」
いつも通り。
一人にして欲しい時に…
「この前、サーバーダウンが起こったんだって。それで、Θ∧ΣΩが行けなくなったってさ〜。つまんないの〜;;」
「へぇ…」
――この前、カイトと戦った時、誰も居なかったのはそのせいか…
複雑に想いと思いが重なった。
「そーいやぁさぁ、イタッチは?」
無理があるそのあだ名の主はどうやら、カイトにデータドレインされた“イタチ”であるようだ。
「今日は…居ない…」
今日はとにかく只管一人で居たかった。
「どーした?」
「別に…」
アクションコマンドでこんな物があったのかと驚く。
クリスの頬が膨らんだ。
「何かあったでしょ。あたしに言ってみなさい!」
「いや。無いってば…」
「あたしこう見えても二十歳過ぎてるんだからね!大人なんだから何でも相談して」
「別に相談なんて無いって」
そう言ってカオスを適当にエリアを選んで転送した。
エリアレベルは1低い。
だが、エリアレベルに合わない敵が居るなんて…
カオス(文也)は知る由も無かった。

朝。
昨日の出来事で眠る事が出来なかった。
しかし、朝練へ行かなければいけない。
今出れば春山先輩に会える。
昨日の事を相談したい…
一人で抱えるには…重過ぎる。
話せるのは春山先輩だけだと思う。
学校で信用しているのは宮本一海と井上拓実と春山花美だけだ。
理由と言うものは特にない。
ただ、信用できる。それだけ。
今は、一海も拓実も居ない…
そうなると、春山先輩しか居ない…
鈍く錆びた音。部室への扉。
男の汗臭さに包まれる部屋に一人、ぽつんとふわふわの髪の美が付けられる少女が準備を進めている。
茶色の髪と綺麗な二重目。以前はこんな事は感じなかったが愛しく思える。
多分、二人の親友を失って欠けた所に埋まったのが春山先輩だったからだろう。
特に付き合いたいとか一緒に居たいとかそう言う感情が湧かないのもその性だろう。
「あ、フミ君。今日も早いね。また何か来たの?」
先輩は以前、文字化けしたメールを解読してもらった。
「あ、いや…今日は…その…別の理由があって…」
「どうしたの?」
――僕の『おねぇちゃん』みたいな存在…春山先輩なのかなぁ…
文也の心は空しさで埋まっていた。
結局は空しさだ。蜂の巣のようになっている。
――まず、ずっと貯めてた事から…
「まず、フミ君って呼び名…やめて頂ければなぁ…と思いまして…」
「ふ〜みん?」
――余計悪くなっちゃったよ…
「いや、普通に名前で呼んでいただければ…」
「わかった〜。んで?文也、今日はどうしたの?もっと深刻な事がありそうだよ?」
流石に鋭い。
それとも、顔にでも書いてあったのだろうか。
「拓実も…意識不明になっちゃったんです」
その後、初めて春山先輩に全て話した。
もう耐え切れなかった。
春山先輩だけは巻き込みたくなかった。
気が付けば泣きながら話している。
泣いたなんて…小学生以来だ。
「全部…抱えちゃってたんだね…カズ君の事でさえも…」
「……はい」
「もう、大丈夫。って言いたいけど、ゴメンね言えない…」
春山先輩は無念そうに顔を下に向ける。
10秒経って顔を上げた。
「今度…遊園地にでも行こうか。気晴らしに」
突然の誘いに文也は戸惑ってしまった。
「あ、あの…えっと…」
「デート…だね…」
急に心臓の音が早くなる。
このまま気絶してしまいそうだ。
思ってもみなかった。
いや、思う筈もなかった。
春山先輩は『信用でき、尊敬できる先輩』だった。
それ以上でもそれ以上でもない。
でも、行きたくない訳ではない…

「わ、わかりました…」