夕方の買い物も、学校に行ってるからの醍醐味で、夕日を見ながらの散歩はまた格別だ。夏は夜と言うけれど、よく晴れた日は夕焼けもまた美しい。
まだ暑い…。
夏はまだ続いている。
涼しくなるまで後一ヶ月はある。辛いような気もするが、冬の寒さを思い出すと来て欲しくなくなるのは不思議だ。それなのに、中間の春には冬の終わりが嬉しくて、秋には夏の終わりが嬉しくなる。人間は不思議だ。
日はまだ長い。
夕日と言っても、だいぶ傾いてきただけで、日の入りまではまだ時間はある。街が闇に包まれるのはまだ少し先だ。
一瞬先でも未来という。そうならば、一日の初めから一日の終わりも、凄く遠い距離に感じる。
それなのに、蓄積された時間の中での一日など塵にも満たないのだ。
夕日を見ただけでここまで考える…。
それもなんだか不思議な事だ…。
「どうしたの?ぼーっとしちゃって」
「ん?いや、世界ってさ、色々知らないことが多くて、色々不思議な事が多いんだな…って思ってさ」
ウィーバも疑問を持ったらしい。何考えてるの?と思いっきり顔に書いてある。
「不思議ねぇ…まぁ、疑問を持つ事は発見の一歩だから良いと思うよ」
「発見とは少し違った不思議だと思うけどな…」
あからさまなフォローに少し苦笑いしてしまった。
不思議…
不思議と言えば、今日の奏伽の事…。
仮面を被った感じで、何かがありそうな…。悪い人じゃない。
けれど…
「あぁ〜やっと力も戻ってきた…セレク戦にちょっと使いすぎたからなぁ…。イギリス行っちゃったのもあったし…」
「無理して行ってたの?」
「ちょっとね」
理由はただ一つ…。
どうしてもアリサに会いたかった…。アリサなら、会うだけで今の自分が救われる気がしたから…。理想と現実は少し違かったが、敵で無かった以上、問題は無いし、後悔もない。会ってよかったと思っている。
「あの時の…あのアリサの言葉…どう思う?」
アリサを思い出してウィーバは尋ねた。
「第四形態の事?」
「そう。第四形態って動きが悪くて主に留まって完全破壊してから行動するの。つまり、少しずつ世界を破壊する最終兵器。だから、近いうちだとしたら既に近くに第四形態が居る筈なの。だけどそんな気はしない…。そうすると第三形態が進化するしかない…。でも、第三形態なんて早々に現れる筈は無いんだよ…」
「だとすると…何か問題があるの?」
「大有り。幾ら断珠世代で青流石がこの町に集まってるとは言え、この短期間で民氣が三体来るなんて、普通は考えられないの。つまり…、この町がおかしいか、世界がおかしいか、私達の…いや…、多分これは無いかな…」
普通じゃない。裏の世界に詳しくない信二でもここまでは解った。確かに、幾らなんでも必死過ぎる。
「民氣内で情報交換とかは?」
疑問を整理する為に一応訊く。
「そこまで無いはず。団体だったら別だけど…、でも、主に個人行動」
予想通りだった。
完全におかしいのだ。情報交換なしにここへ集まってくる。気配なんてそこまで遠くまで感じる事は出来ない。それに対し民氣は世界中に散りばめられている。不自然過ぎるのだ。
「情報が少なすぎる…。ウィーバ、一旦WMSFに行こう。ロイドと話がしたい」
――WMSF京都支部
緊急だった為、アフリカに居たロイドとはテレビ電話での会話となった。
テレビ電話でも流石世界の最先端を行っている世界機密局だ。格が違う。画像がブロック化せず、フルハイビジョンにプラスして大画面という環境がロイドを映し出している。
「――って訳なんだけど、どう思う?」
『うーん…忙しくてそっちがそんな危機的状況になっているのを気付いてて見過ごして忘れてしまっていたな…。すまなかった…』
「いや、別に大丈夫だよ。僕たちはまだこうして生きてる訳だし」
『確かにそうだ。それにしても…さっきの話が本当なら大変な事だ。アリサの予言は外れた事が無い…。だとすると………ッ!もしかして……そうか!すぐそこに開発局の者は!』
「はい」
外で監視をしていた白衣の男が入ってきた。
『宝珠の探索機の強化だ!距離ではなく反応の具合を上げてくれ!出来れば信二君の青流石で今の魔流石ぐらいの反応になるように!』
「はい」
何故かを訊かずに開発局の男は立ち去って行った。その後に…
「ロイ…意味が解らないんだけど?」
「…俺も確信は持てない。だから言いたくない。結果が出てからだ…。今日はもう帰れ。もうすぐ十時だ…」
ロイドは考え込んでいた。ハイビジョンでなくともそれは解っただろう。
「解った。そうするよ。行こう、ウィーバ」
「………」
「ウィーバ、ほら」
信二はウィーバの手を引いて無理やり帰った。ウィーバはどうしてもロイドの考えを聞きたかったらしい。
きっと、聞いたら後悔する言葉を…。
「…そんな、結果が出ない事を祈るか。でなければ、彼女に彼女たちに課せられた事は荷が重過ぎる」
